1.訓練に参加することになった経緯を教えて下さい
7年ほど前になりますが、会社全体の気持ちが緩んでいた時期がありました。お客様に恵まれていた為、社員の努力がなくても順調に仕事が進み、業績も上がっておりました。
結局、誰も努力をしない状態が続き、面倒なことはしない、新たな事にも取り組まないと言った甘え体質になっていた時期でした。
ちょうどその頃に先代の社長がアパレルの倉庫管理事業を始めたのです。しかし、会社の空気が生ぬるい状況でしたので、当然新たな仕事の立ち上げもうまく行くはずがありませんでした。
私自身なんとか会社の空気を変えなくてはいけないという危機感を持っておりましたが、そんな折、社員教育について取引のあった佐川急便の方に管理者養成学校のお話をお聞きしました。
その時、全員で参加して価値観を共有するには、ちょうど良い体験になると思い、社長に私から直接「行かせて下さい」と直談判をしたのです。もちろん社長や会長は私以上に危機感を感じていましたので、すぐに了承をいただきました。
2. 具体的にどういった部分に危機感を感じていましたか?
会社の成長期で一気に業績を伸ばしてきた時期でもありましたので、その間はみんなで血眼になって必死に仕事をしておりました。当時は20台ほどのトラックをまずは100台にしようという明確な目標がありましたが、100台の目標を達成したときに、次の目標を見失ってしまいました。目標を達成して気が緩んでしまったのです。そして、3年ほど緩い時期が続きました。本当に危機感を感じました。
3.管理職の方は緊張感のない社員に対して叱ったりしなかったのですか?
それまで叱るような文化もなく、非常に忙しい時期でしたから勢いだけでやってきて、みんなそれについてきたので、特に注意などしなくても自然と仕事は回っていました。私がこの管理者養成学校の訓練を会社に取り入れましょうと言ったと同時に、社長は部屋の奥から履歴書を取り出してきて「実は管理職を入れ替えようと思っていたんだ」と聞き、驚きました。
しかし、当時の社長の考えではいきなり外部から新しい人を呼んできても上手くいくか分からないし、ものすごく労働シェア型産業であるため、突然知らない人が入ってきたからと言って、その人の言うことを聞くか疑問もあったようです。そういう意味では大きな賭けで、躊躇した部分もありました。
したがって、訓練参加は最後の賭けという意味で私が最初に行ってきました。その後は、半年間で10人ほど訓練に参加しております。
4.実際の訓練を目の当たりしていかがでしたか?
事前に視察に行きましたから、驚きはありませんでした。もちろん見学の時に衝撃を受けましたが、是非この訓練に参加しようという気持ちになりました。特に見学会で「素読」を聞いた時にはすごく共感を受けました。それだけ問題意識が高かったのだと思います。
私が訓練から帰ってきた時、会社で訓練の成果発表で「素読」を行いましたが、社長もすごく衝撃を受けたと後から聞き、その後も、ことあるごとに「素読をやってくれ」と言われました。
5.江藤さんご自身の役に立った訓練は何ですか?
「共感論争」と「行動力論争」です。特に「共感論争」は白熱しました。
日頃の仕事にピタッと当てはまる題材が多いからです。今までの考え方で良かったのだと再認識できることが多かったです。いろいろな考え方の発見もたくさんありました。
その影響から購入した書籍の「管理者の条件」は、日常の仕事に出てくる些細な出来事がいろいろな角度で書かれているので、日常の現場で役立てています。
6.訓練を通して一番ためになったものは何ですか?
自分にとってためになったのは「40km夜間行進」です。私は指揮官と殿(しんがり)の両方を掛け持ちました。私は腰痛がありましたので指揮官に就くことができなかったのですが、途中20km辺りで指揮官が足の靭帯を痛めたため、私が代わりを務めました。
一番後悔しているのは2つのグループに分けたことです。遅いチームと早いチームに分けてしまったのです。事前に講師からは「早い人のペースに合わせなさい」と言われていたのですが、実際は離れてしまいました。時期も冬の寒い時期でしたので、遅いチームを待っているのが厳しかったです。
しかし、終わってみるとその判断が間違いだったと後悔しました。
残り3~4km時点で待っていたのですが、その時点で怪我をした人や体調を崩している人が何人もいました。早いチームは5人程いたのですが、「これでは完歩は難しいかもしれませんね」と、つい言ってしまったのです。
そうしたらその場に座っていた班友達の頭がガクッと落ちたのです。それを見た瞬間に「俺は何を言ってるんだ」と思いました。このことが「40km夜間行進」を行っていたときに、今までの自分が出たと感じました。指揮官として全員完歩させなければいけないという義務があるにも関わらず、自分が無理と言ってしまったらそれはもう無理だと認めることになります。
それまでの自分の仕事のいい加減さを思い出しました。ダメな人はどんどん切り捨てていたのだと思いました。「みんなで一緒にやっていこう」ということが足りなかったのだと思います。
せっかくここまで来て、あと少しだと言う時に絶対に言ってはいけないセリフを言ってしまい、ものすごく反省させられた出来事でした。
これが本当の自分なのかと感じました。本当に気づきを得た意義深い「40キロ夜間行進」だったと思います。
7.訓練生活自体はいかがでしたか?
人生に対して1つの経験としてプラスになったと思います。反省することの大切さや自分の生き方にも共通してくると思います。
きっとスケールの大きい経験をしたのだと思います。管理職になるための根本的な人間の在り方という根本的なところを経験したと感じます。
8.江藤さんの卒業後、社内の変化はありましたか?
みんなが修了して1~2年してくると言葉の使い方が劇的に変わりました。「できない」という言葉がタブーになりましたし、いいアイディアがあれば、「みんなでやりましょう」と言うようになりました。気持ちが根本的に変わったと思います。
最初の年は「挨拶」の徹底でした。次は「やるべきことをしっかりとやろう」「決まりを守りましょう、徹底しましょう」ということに力を入れていきました。意識が劇的に変わったと思います。しかし、この考え方ついてこない管理職は半年間で半分以上も辞めてしました。他の社員からも物凄く拒絶反応も受けましたが、危機感を持っていたのは私だけではありませんでした。
さらに「挨拶を大きな声ですると気持ちいいですね」と言う社員も出てきました。この「挨拶」の訓練は大きな変化のきっかけになったと実感があります。
9.これから参加される方に一言お願いします。
私自身、すごくためになったと思います。自分を見つめる良い機会だと思って参加していただきたいです。
派遣する側の立場で言えば、教育の一環ですから、直ちに何かの効果が出ると期待をされますが、我社のように長い目で見るとすごく成果が上がったという実感があるので、絶対に必要なことだと思います。